【1】酒米

酒の原料となるお米。酒造りに適した「酒造好適米」を活用します。

代表的なところだと「兵庫県産 山田錦」「岡山県産 雄町」「広島県産 八反錦」などが有名ですね。

米にも個性があり、心白の大きさや固さなど様々あるようです。

最近だと地元で酒米を造っているものも多いですね。地産地消の銘柄にはとても好感を覚えます。

【2】精米、洗米、浸漬、蒸米

米はまず粒の周辺部分を削ります。これを米を磨く、や精米などと言います。

タンパク質などを多く含む周辺部分を削り、「心白」というデンプン質の多い中心部を取り出します。

この磨きの度合いが良く言う「精米歩合」ですね。精米歩合が60%、というのは玄米を100%として40%を削っていることになります。

一般的には玄米の外側に含まれるタンパク質や脂質が多いと発酵のスピードを速めコントロールしずらく雑味の原因になるそうです。

何度かも見かけていますが、精米されたお米が丸っこくなります。

その後は洗米してそれを水に浸す浸漬という工程です。

こちらも複雑で浸漬の時間によって米に含まれる水分量が変わり、蒸米の際の時間が変わるのだとか。

さて蒸したあとは「麹づくり」ですね。※製麹とも言う。

【3】麹づくり

蒸した米は「麹室」(こうじむろ)という部屋に入れて冷まします。蔵見学でみかける部屋ですね。

ここは冬でも30度くらいあるらしいです。

その蒸米に「」(こうじ)※デンプン質を糖分に変える酵素を含んだカビの一種。を振りかけます。

この麹菌が高温の中で中心部(デンプン質)へと逃げ込みデンプンを餌に糖を吐き出していくようです。

精米歩合の違う純米酒と大吟醸酒では使用する麹の量が違うようです。麹がなかなか中心部へいけない純米酒には多くの麹を使うらしいです。

【4】酛づくり

続いて酛づくりです。酛は「酒母」とも呼ばれます。

まず麹米に水を加えます。ここでふたつに別れるのが

・乳酸菌を空気中から取り込んで育てる(生酛系酒母

・乳酸菌を人工的に加える(速醸系酒母

のいずれかで「他の菌の繁殖を抑える」そうです。

その後は小さなタンクに移して酵母と水を加えます。この酵母が糖をアルコールに変換します。

乳酸菌によって酸性になった環境下では他の菌は繁殖できないが、酵母は育つことが出来るらしい。

この加える酵母によって味と香りに影響を与えるようですね。とても大事な工程です。

上記にある生酛系酒母の中で、酛をすりつぶす山卸しを行う「生酛」と行わない「山廃酛」に分類されます。

この酛の中では

・麹菌による糖化発酵(デンプンから糖)

・酵母によるアルコール発酵(糖からアルコール)

が同時に行われており、これを「並行複発酵」と呼び、日本酒造りの非常に複雑な理由だそうですね。

ちょっと調べただけでもこの「酵母」はかなり奥が深そうです。。

そもそも蔵の仕込み水との相性によっても変わるとのこと。ミネラルの多い硬水、少ない軟水の違いなど。

協会6、7,9号系の「ヒトケタ酵母」や14,15号などの「フタケタ酵母」なんて呼ばれているみたいです。

前者が一般的には発酵力が旺盛でおおらかに使える酵母で香りはないが適度の熟度に向き、

後者は華やかな吟醸香のある酒に向くらしいです。

他にも低温に向く、高温に向くなどもあり、この酛づくりは温度管理もとても大切だとか。いやぁ奥が深いです。

この酛が出来るまでには15日から長いもので35日以上かかるようです。

【5】醪づくり

酒母が出来たらいよいよ醪(もろみ)です。

酒母を大きなタンクに移して水、麹、蒸米(これを掛米と呼ぶ)を加えます。

ここで一気に加えるとうまくいかないようで3度に分けて仕込むようでこれを「三段仕込み」と呼ぶようです。

初添、中添、留添なんて言うらしいですが素人には使えそうもありませんね。

醪になってからの日数を「醪日数」と呼び、この工程が25日〜30日程度。長いもので40日くらいあるらしい。

お酒は冬につくるのである程度低温なのでしょうが、ここは蔵独自に温度管理をしているのでしょうね。

計測器など技術は入れるものの、杜氏の判断が大事になるのでしょうね。

【6】上槽

発酵後の醪を絞って原酒と酒粕に分ける工程を「上槽」(じょうそう)と呼びます。

大きく搾り方は3パターンあるようで

圧搾機と呼ぶ機会で搾る

木槽とよぶ木の器に入れて少しづつ圧力をかけて搾る

布袋を吊るしてしたたり落ちてくるのを集める

などのようです。下にいくほど贅沢に感じるのは私だけでしょうかね。

当然搾るタイミングも杜氏の判断で、良い具合の発酵状態を見定めるのでしょうね。

さてここからは生酒として楽しむのか、火入れをするのかなどなど次の工程に入ります。

【7】滓引き(おり)・濾過

原酒には細かい滓と呼ばれる浮遊物が無数にふくまれてる。この滓を沈殿させて上澄みを取り

さらに細かい滓を濾過することで透き通った酒が出来上がります。

濾過に関してはフィルターを通して濾過するパターンか活性炭と濾過助剤(セルロースや珪藻土)を用いる

いわゆる炭濾過のパターンの二通りのようです。

濾過をすることで雑味や色を取り除くのですが、ここで旨味や風味をもっていかれる、と異を唱える人もいるそうです。

巷では無濾過のお酒もありますが、全体でいくとかなり少量だそうですね。

よく日本酒は米と水だけでできている、なんていいますが、麹や酵母など天然のものはさておき

濾過助剤とかは化学物質になるのでしょうかね。

【8】火入れ

火入れとは簡単に言うと出来た酒を加熱して酵母を死滅させること。

酒に悪さをして味や香りを劣化させる酵素や微生物の活動を停止させること。

と言います。

しかしながらここも大変奥が深く、生酒と火入れのお酒はそれぞれ違う魅力があるので

そのいずれも最高の状態にするのが蔵の努めだとか。

搾りたての生酒は香りや味も華やかでガスを含んで弾けるような美味しさがあります。

が、時間が立つにつれて変に甘くなったり重たい味になるなど変化が激しいそうです。

以前に読んだ記事であの十四代の高木酒造さんが「生酒の魅力は花火のようなもの

と仰っていました。

生酒のおいしさはあがったりさがったりを繰り返しながら緩やかに上昇するイメージらしく

その最高潮のタイミングで火入れを行うのだそうです。そのために絞った生酒は0度で保存し、毎日飲んで

タイミングを計るのだとか。いやなんとも奥深い話です。

生酒といえば昔は冬季に蔵を訪ねてようやく飲める贅沢品でしたが今は冷蔵や流通の技術のおかげでどこでも

頂けるようになりましたね。

ちなみに火入れにも種類があって

生酒:一切火入れをしないもの

生詰:搾ったあと貯蔵前に一度火入れをしたもの

生貯蔵:搾ったあと生で貯蔵して瓶詰め前に一度火入れしたもの

に分かれます。

【9】貯蔵、加水、瓶詰め、出荷

ここまできてようやく貯蔵です。

貯蔵の際はタンクで貯蔵するパターンや瓶に入れて貯蔵するパターンがあるそうです。

通常、酒は秋まで貯蔵され、夏の間をゆっくりと熟成させて旨味をのせるのが一般的ですね。

温度が高いと熟成が進むのですが、ここは酒の質にあわせて厳密な温度管理が重要になるようです。

その後は加水します。ここでアルコール度数を調整します。この加水をしないものがいわゆる「原酒」ですね。

水に含まれるカリウムはリンは酵母を活性化させる働きがあるそうです。

その水が硬水であればしっかりとした味わいに、軟水であればやわらかな味わいになるとか。

水の質はとても大事なのでしょうね。

その後は瓶詰めして出荷です。この瓶詰め前にもう一度火入れをして計2回の火入れをするのが最も一般的です。

 

こちらで工程の全てになりますが、これほどまでの多くの、そして複雑な工程を経て日本酒が出来上がるのですね。

米や水の品質、農家・杜氏の技術とこだわりの全て注いで出来上がる日本酒ややはり「日本の結晶」ですね。